前回の(その38)では、ストレスを受けた時の対処法について考えてみました。ストレスと一言で言っても、いろいろな種類のストレスが考えられます。ここでは、深い悲しみを伴うようなストレス、いわゆる、『グリーフ』について考えてみましょう。グリーフ(grief)とは、日本語では、悲嘆とか、深い悲しみ、悲痛、と訳されますが、日ごろの生活では、耐えられないくらいの悲しい、つらい気持ち、と思えばよいでしょう。まだ私自身は、そういう経験がありませんので、実体験としてのコメントはできないのですが、私のところに相談に来られた方で、まさに、そのものを経験された人がありました。
もう、15年くらい前のことでが、60才台の女性が相談に来られました。話しをお聞きしますと、その方のご長男が、数日前に、自宅で首つり自殺をされたとのことでした。その時の様子をことこまかに話しをされました。このご長男は、ひきこもりで、仕事に行かずに家にいる生活をしていました。ある日、このお母さんが外出から帰ってきて、『ただいま !! 』、と声を掛けたら、いつもは『お帰り !! 』、という返事があるのに、この日に限っては何の返答もなかったそうです。
それで、おかしいなと思って、二階にあるご長男の部屋に行って戸を開けたら、目の前に、窓わくのカーテンレールに、ひもで首を吊っているご長男の姿が目に入りました。このお母さんはしっかりした人で、あわてて部屋に飛び込んで、ご長男の身体を持ち上げて、首のひもをはずしたそうです。おそらくは、この数分の間は、何も考える余裕がなくて、無我夢中で必死で処理をされたことでしょう。しかし、その後では、深い悲しみが襲ってきました。
それで、私のところに相談に来られたわけです。このような、普通ではありえないような深い悲しみに対応するには、それなりに訓練を受けて、しっかりとその人を支えることができるセラピストなり、お医者さんが対応しないと、相手の人の助けにはなりません。ということで、私は、グリーフケア(グリーフを受けた人を支援する)を専門とするお医者さんをご紹介しました。このお医者さんは、神戸赤十字病院の心療内科部長の、村上典子先生です。この村上先生は、大きな災害地とか、戦闘地域でのグリーフケアにおくわしいお医者さんですので、何か、助けていただけるだろうと考えました。
この続きはまた、次回にお伝えいたします。







