前回の(その36)では、オーストリアの精神科医のヴィクトール・フランクルが、ナチの強制収容所に収容された時に、ある年のクリスマスイブに、収容者全員が解放されるといううわさが流れて、実際には一人も解放されずに、そのうわさはウソであったという話しがありました。そのうわさのあとで、ある人は衰弱が激しくなって死亡した人もあり、元気に乗り越えた人もいたという話しでした。当然、当のフランクルは生き延びたわけです。このフランクルという人は、収容所から解放された後も、92才まで長生きをされましたので、もともとが身体が頑健な人だったのでしょう。その上に、彼は精神科医でしたので、収容所でのこのような出来事に対しての対処の仕方を充分に心得ていたに違いないと、私は思います。
このことを、私たち、一般の人間に当てはめてみますと、人生においての多くの苦難の乗り越え方について、大きな教訓と示唆を私たちに与えてくれるのではないかな、と私は考えております。前回までで、『諸行無常』という言葉がありましたが、世の中は常に移り変わり、変化していくものであるということが、こころの中で深く理解されていれば、多少のことが起こっても振り回されずに、うまく対応していくことができるのではないでしょうか ? フランクルは、もともと精神科医として、『実存分析(ロゴセラピー)』という考え方で治療をしていたお医者さんですので、なおさらにこういう場面では強く生きられたのではないでしょうか ?
私たちはおうおうにして、今の生活がうまくいっていると、このような生活が長く続いてほしい、長く続くに違いない、と心の中で思ってしまいます。しかし、『諸行無常』の言葉通り、世の中ではいつなんどき、何が起こるかは分かりません。たとえば、いつなんどき、自然災害が私たちを襲ってくるかもしれません。いつなんどき、大変な病気になるかもしれません。そういう気持、柔軟な気持ちで、『諸行無常』の心でいたいものだとおもいます。皆さまはいかがお考えになられますでしょうか ?
次回もこのことを考えてみましょう。






