前回の(その9)では、ストレスが身体に現れる時には、『痛み』として現れることがあり、その痛みが、ストレスのせいからきているということに、なかなか気づかないので、どうしても痛みが長引いてしまうというお話しをしました。
このような場合によく言われるのが、『脳が痛みを覚えているので、クスリが効きにくく、痛みが取れにくい』、という説明です。では、脳が痛みを覚えるということは、どういうことでしようか ?
このような時にまず働くのは、脳の偏桃体と言われる部位です。偏桃体はストレスを感じて、恐怖心や不安感を感じます。そのようなことが長く続きますと、偏桃体が過敏に働くようになり、少しの刺激でも、大きな痛みの反応を引き起こしてしまいます。
偏桃体の働きに大きな影響を及ぼしていることの一つが『血中の酸素』です。ストレスがかかって、身体が緊張しますと、呼吸が浅くなりやすくなりますので、どうしても酸素の吸収力が弱くなります。さらには、緊張によって血管が収縮しますので、血流が悪くなり、脳への酸素供給が悪くなります。
それが、偏桃体の働きに影響して、痛みを敏感に感じてしまうようになるのです。
そうすると、おのずから、痛みが長引いたり、ちょっとした痛みにも敏感になってしまうのです。
ですので、ストレスによる身体の緊張をやわらげて、偏桃体の酸素不足を解消することが、痛みを取るのには効果が期待できます。
そのための具体的な治療法として、アメリカの、ジョン・サーノというリハビリテーション科の医師が開発した、『TMS=緊張性筋痛症候群』という治療法がありますので、次回からはこの方法をご紹介しましょう。
