前回の(その7)では、『台所の後片付けを頼んだ奥さんが、ご主人に対して、片付けをしてくれているに違いない⇒後片づけをしていなくてはならない』、というように考えました。
認知行動療法では、この時の奥さんの気持ち=考え方=思考=認知を、『自動思考』とよんでものすごく重要視します。つまり、この自動思考にこそ、問題を解決するカギがある、と考えます。
では、どのように考えるのでしょうか? あれだけ強く後片付けを頼んだのだから、主人は片づけてくれているに違いない、と堅く思いこんだので、それ以外の状況は想定ができません。ので、後片付けをしていない台所を見て、カンカンに腹が立ったわけです。
そこでもしもかりに、奥さんが、初めから、『主人はいい加減なところがあるので、あれだけ頼んでおいたけれど、ひょっとすると、何にもしてくれていないかもしれないな』、と考えていたら、後片付けをしていない台所を見ても、あれほどは腹が立たなかったのではないか、と考えられます。
このようにして、認知行動療法では、場面場面によって、自分の考え方を柔軟に対応するようにトレーニングをしていくのです。そうすることで、腹が立ったり、感情を爆発させたりすることを少なくしていきます。
このような方法を、『認知更構成法』とよんでいます。そのことが、結果的に、自分をラクにしていき、ひいては、病気を治していくことになります。